逆流性食道炎(びらん性GERD)
このページの要点
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胸やけ,呑酸(酸っぱい液が上がる),のどの違和感や長引く咳が続く方はGERDの可能性があります.まずは問診と必要に応じて胃カメラで評価します.
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GERDの**約半数〜7割は「非びらん性GERD(NERD)」**です(内視鏡でただれが見えないタイプ).症状評価票(Fスケール)も活用します.
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治療は薬物療法(制酸薬 など)+生活の整え方が基本.就寝前の飲食回避・体重是正・頭側挙上などは有効です.
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難治例や合併症(びらんの強い食道炎,高度のバレット食道など)では内視鏡や外科と連携して精密検査・治療を検討します.
どんな症状?
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胸やけ,みぞおちの痛み・ムカつき
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呑酸(酸味・苦味の逆流),げっぷが多い
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のどの違和感・声のかすれ,慢性の咳(耳鼻科・呼吸器の病気と,時に紛らわしい)
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夜間・就寝時に悪化,眠りの質の低下 など
※ 食道以外の症状(咽喉頭違和感・慢性咳嗽など)もGERDで起こることがあります
当院での進め方
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問診・Fスケールによる症状把握
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生活の整え方のご提案と,制酸剤(PPI/P‑CAB)を中心に薬物療法を開始
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再診で効果判定(症状・Fスケールの再評価)
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難治例は [o] 胃カメラで粘膜評価,必要時に連携施設で機能検査
受診の目安
以下に当てはまる場合はご相談ください.
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胸やけ・呑酸が週1回以上続く/悪化している
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夜間症状や嚥下時のしみる痛み,体重減少,黒色便(タール便)などを伴う
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市販薬で改善しない/再燃を繰り返す
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長引く咳やのどの症状が続く(他科と重なる症状のため鑑別が大切です)
※ 他疾患の除外のためにも,症状が続く場合は評価をおすすめします.
原因と起こり易い状況
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下部食道括約筋のゆるみ・一過性弛緩:胃と食道の境目にある筋肉(下部食道括約筋=LES)が一時的にゆるむと、胃酸や内容物が食道へ逆流しやすくなります。これが逆流性食道炎の主要因です。
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食道裂孔ヘルニア:食道が通る横隔膜の穴(食道裂孔)から胃の一部が胸側へずれる状態
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過食,高脂肪食,遅い時間の飲食,アルコール,多量のカフェイン,炭酸飲料
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肥満・腹圧上昇(前かがみ・ベルトの締め付け・重い物持ち),妊娠,加齢
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ストレスや睡眠の質の低下
これらが重なると逆流が起こりやすくなります
当院で可能な検査
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問診・診察と症状評価:日本人向け質問票(Fスケール)を用いて症状の頻度・重さを数値化します.スコアが高いとGERDの可能性が高く,治療効果のフォローにも有用です.
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[o] 胃カメラ(上部消化管内視鏡):食道粘膜の炎症(Los Angeles分類など),食道裂孔ヘルニア,バレット食道(長引く逆流で、食道の下端が“胃型の粘膜”に置き換わる)の有無を確認します.必要に応じて組織検査を行い,他疾患を鑑別します.(鎮静の有無はご希望と全身状態に合わせてご相談)
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追加検査(必要時,連携機関で実施):24時間pH/インピーダンス検査,食道内圧検査などは,大学病院のみで実施可能です.
診断の考え方
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典型的な胸やけ・呑酸がある状態を,食道胃逆流症(GERD) といいます.
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さらに,内視鏡でびらん(粘膜の表面にできる浅い「ただれ」)があればびらん性GERD(逆流性食道炎)に相当します。重症度は,程度により段階的に評価します.
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びらんが無ければ非びらん性GERD(NERD)と分類します.GERDの約50–70%はNERDで,食道の知覚過敏が関与します.
治療は,薬と生活の両輪がカギ
薬物療法
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PPI(プロトンポンプ阻害薬)は,ベーシックな酸分泌の抑制薬です.
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P‑CAB(ボノプラザン):酸分泌抑制が強く,重症例やPPI抵抗例で有用とする報告(エビデンス)があります.
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必要に応じて,異なる制酸薬であるH2ブロッカー,消化管運動機能改善薬,粘膜保護薬などを併用します(病型に応じて選択).
生活の整え方(再発予防を含む)
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就寝前2–3時間は飲食しない,頭側挙上,左側臥位で寝ることは夜間症状の改善に役立ちます.
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体重の是正(減量)は推奨度が高い対策です.腹部の締め付けを避け,長時間の前かがみ作業は適宜休憩を入れます.
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過食・高脂肪食・アルコール・炭酸を控える,その人に症状が出やすい食品を避ける.
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禁煙(ニコチンは逆流を助長).
外科・内視鏡治療(連携)
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薬に反応しない明らかな逆流や高度の食道炎/大きな裂孔ヘルニアがある場合,逆流防止手術(内視鏡的逆流防止粘膜切除術(ARMS),腹腔鏡下噴門形成術など)を検討します.
合併症とフォロー
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バレット食道(食道下部粘膜が胃型の粘膜に置き換わる病態)では長期的にはがん化リスクが指摘されており,定期的な内視鏡観察を行います.
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症状の再燃がある場合は,維持量や内服方法(連日/オンデマンド)を含めて再評価します
参考資料
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日本消化器病学会「患者さんとご家族のための胃食道逆流症ガイド 2023」日本消化器病学会
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ACG臨床ガイドライン 2022


