色でわかる大まかな目安
鮮やかな赤(鮮血)
直腸〜S状結腸・肛門病変が多い
暗赤色(暗赤〜ワイン様)
より口側の大腸〜小腸の出血のことがある
黒色便(タール便)
上部消化管出血(胃・十二指腸など)を示唆
色だけで必ずしも決まるものではありません.
受診を急ぐべきサイン
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出血量が多い/動悸・めまい・冷汗など循環動態の異常が疑われる/吐血もしている
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腹痛・発熱を伴う(感染性腸炎・虚血性大腸炎 等)
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高齢者、抗血栓薬内服、基礎疾患(心腎肝疾患 等)がある
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反復・持続する血便、体重減少・便柱狭小化・便通異常の変化
上記の場合近日中に受診を.とくに1は即座に救急受診,2,3も即日受診必要.
血便と「便潜血」の違い
血便
肉眼で見える出血(鮮血・暗赤色・黒色便)。症状として扱い、通常,早めの臨床評価と検査が必要です。
便潜血
無症状者に少なくとも微量の血液が検出されたもの.それでも 陽性=内視鏡による精密検査が必要.[o] 便潜血の別ページをみる
主な原因疾患(代表例)
※黒色便(胃や小腸が原因のことが多い)に関する疾患はここでは省略しています.
痔核・裂肛
排便時の鮮血で、便に混ざらず付着・紙に付く形が多いですが,他の疾患がないことを除外する必要はあります.疼痛の有無・慢性便秘の関与を評価します。中等症以上では,肛門科での治療が必要です.
大腸がん
鮮血〜暗赤色便、便通の変化や貧血を伴うことがあります。大腸内視鏡を実施し、生検で診断します。精密検査,病状に応じた治療が必要です.
大腸ポリープ
良性の大腸ポリープも,特に隆起の丈が高くS状結腸や直腸にあるものは,時に血便の原因となり得ます.将来大腸がんになり得るタイプと,そうでないものがあります.内視鏡治療が可能な場合が多くあります.
潰瘍性大腸炎
直腸を含む大腸の粘膜に炎症が起こり,慢性的な血便,粘血便の原因となります.専門医による診断が必要です.
クローン病
慢性的に小腸や大腸に炎症や潰瘍を起こし,肛門病変(痔疾,裂肛)を伴うことが比較的多い疾患です.同様に診断が極めて重要です.
憩室出血
通常腹痛を伴わず便意を催し,多量の血便が続く,という特徴があります.救急外来の受診が必要です.
虚血性大腸炎
突然の腹痛発作に続く下痢・血便。中高年・便秘傾向で誘因あり。画像検査や診察により,範囲・重症度を確認。
感染性腸炎
多くは経口的に侵入した,病原性大腸菌やカンピロバクター,アメーバなどの病原体を原因とした大腸炎です.腹痛・発熱・血性下痢が様々な程度,バリエーションで生じます.。渡航歴・食歴・周囲発症の有無を問診し、便検査・支持療法を検討します。
血便に関するQ&A
Q1.
便に混じる血液の色で何がわかりますか?
A
血液はもともと鮮紅色ですが,出血が起こって時間が経つごとに,暗赤色に変わり黒っぽい色に近づいていきます.よって,便と一緒に真っ赤な血液が出た場合は,肛門の近くからの出血と推定され,黒っぽい便が出た場合は大腸よりも遠い,小腸や胃からの出血の可能性が高くなります
Q2.
血便は重大な病気ですか?
A
血便の原因には重大な病気も含まれますが,そうでないものも多くあります.
出血の量や血液の色などで,病気の重大さは必ずしも決まりません.出血の量が多く,仮にその他の症状(だるさ,腹痛,発熱など)を伴っていても,ある程度の期間で軽快する一過性のものもあります.他方,出血の量が少ない,あるいは自分では気づかず,ただ便潜血が陽性の場合でも重大な疾患が隠れていることがあります.
Q3.
血便の中で緊急性が高いのはどんな場合ですか?
A
多量の血便の場合や,すぐに2回目の血便が続く場合,ふらつき,冷や汗,もうろうとする,失神しそう,などの症状がある場合は特に緊急性があります.
Q4.
血便の中で緊急性が低いものはありますか?
A
硬い便を排便した際に,痛みがあり,紙にほんの少し血液がつくという方は裂肛など痔疾が多いです.しかし,肛門にも腫瘍性病変があり痔疾とまぎらわしく,早期診断が好ましいものもあります.出血が続く場合は受診を検討してください.
Q5.
どんな診療科を受診した方が良いですか?
A
一般に消化器内科(胃腸科)は,大腸疾患(大腸がん,ポリープや,種々の腸炎)を含む消化管疾患の診療に携わります.血便の原因疾患の中で特に緊急性のあるものや,生命に重大な疾患は含まれます.しかし,特に処置が必要な肛門疾患は対応が難しいです.
一方,肛門科では肛門の全般的な診療に加え,大腸全体の診断や治療まで対応される病院もあります.女性への配慮のため女性外来を設置している施設もあります.
診療をカバーする範囲は施設により異なるため,可能であれば症状を伝えてお尋ねになるのが良いでしょう.
最終監修:2025年10月2日(井星 陽一郎 医師)


