令和6年7月に,町のコミュニティセンターでお話をさせて頂きました.
最新のデータ(2019年)では,日本人のがん生涯罹患率 (がん罹患リスク) は,男性 65.5%, 女性 51.2%
この数字は、2人に1人以上が生涯の間にがんにかかることを示しています。
平均的な日本人(男女,様々な年齢を ひとくくり にした場合)において,この30年間でがんの罹りやすさが2割程度は増している.
全てのがんの種類を含んでいるため,胃がん のように同期間で 30%以上低下 したがんもあれば,大腸がん のように 60%以上増加 したがんあり,全てのがんでは 25%程度増加したことになります.
さて,この増加の原因は,以下うちでどれでしょうか?
①がんができやすくなった
②がんが見つかりやすくなった
③がんが発生しやすい年齢まで長生きできるようになった
まず,③の影響を取り除いた数字を,ここでは示していますので,ここでは当てはまりません.②については,前立腺がんや,甲状腺がんの一部では,以前は診断できていなかったもので,進行が非常に遅く,寿命をほとんど左右しないがんが発見されるものが増え,若干数字に混ざっているのは確かです.
しかし何といっても重要なのは①です.がんの発生要因は,広義の環境要因と非環境要因(遺伝的要因)とに分けられます.日本人全体として,体の設計図(遺伝子)は数十年では変化しないため,非環境要因による影響ではありません.ではこの数十年の間に我々の身体に関して何が変わったか,ということを考えると分かってきます.
我々は日々呼吸をしながら,食物を選んで食べ,嗜み,体を動かすことで生きていますが,この数十年の間の社会的変化により,以下のような環境要因の変化が個々人にもたらされ,がん発生の増加に繋がっています.
がん罹患率の増加に寄与した環境要因の変化
食事の西欧化(動物性脂肪,高カロリー),加工食品
(過去の)喫煙者の増加(30年くらい遅れて肺がんになる)
大気汚染 (PM2.5等)
ある種の感染症(HPVなど)
身体運動の低下
添加物,内分泌撹乱物質
これらの,以前は存在しなかった,あるいは程度の少なかった危険因子により,発癌(がんが発生する)が促進されたと考えられていますが,逆にこれらの危険因子を取り除くことができれば,ある程度がんのリスクを減らすことができます.このように健康的な生活習慣は生活習慣病(高血圧,糖尿病など),心臓病や脳血管疾患の予防として本来望ましいものですが,同時にがんの発病リスクを減らすことにも繋がります.
病気の発生自体を予防することは 1次予防 と言い,重要です.
次回は,がんに関しては同じくあるいはそれ以上に重要,とも言える がん検診(がんの早期発見で治療が可能になることを 2次予防 と言います)について触れたいと思います.
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